先日、こんなご相談をいただきました。
管理職の方は、思ったことをその場で率直に言葉にするタイプ。現場のスタッフさんは、一度自分の中でじっくり考えてから言葉にするタイプ。もちろん、どちらも悪いわけではありません。ただ、この2つのペースが噛み合わないまま毎日が過ぎていき、管理職は「なんで分かってくれないんだろう」と感じ、現場の方は「ついていけない」と感じる。そんな状態が続いていました。
そしてある日、現場の方から「辞めたい」という申し出がありました。
相談してくださった経営者の方は、「コミュニケーションがうまく取れていなかったんだと思います」とおっしゃっていました。たしかに、その通りではあります。でも、それだけで終わらせてしまうと、見えなくなるものがあります。
「コミュニケーションの問題」の手前にあるもの
このケースで実際に起きていたのは、「コミュニケーションが足りない」ではなく、お互いの特性がまったく噛み合わないまま、無理やりコミュニケーションをしていたことでした。
その場で率直に言葉にする人と、持ち帰ってじっくり考えてから言葉にする人。どちらも、その方の強みです。問題は、この特性の違いが認識されないまま、現場で毎日すれ違い続けていたことです。
組織を見るとき、私たちは次の3つの要素に分けて考えます。
- 人材力:一人ひとりが持っている強み・弱み、価値観、思考や行動の特徴
- 組織力:理念や目標、制度、ルールといった「組織の骨組み」
- 関係力:1on1や会議、日々のやり取りなど、コミュニケーションそのもの
この3つが、人材力→組織力→関係力の順に噛み合って、はじめて成果の出る組織がつくられていきます。
今回のケースは、一見すると関係力(コミュニケーション)の問題に見えます。でも、実際の出発点は人材力——つまり、それぞれの特性がお互いに理解されていなかったことでした。
「対話を増やす」の前にできること
もしこのケースで、いきなり「もっと話し合いの機会を増やしましょう」と対策を打っていたら、どうなっていたでしょうか。おそらく、それぞれが自分のペースのまま話し続け、同じすれ違いが繰り返されただけだったかもしれません。
ここで大事なのは、「その場で率直に言う」と「じっくり考えてから言う」は、どちらが優れている・劣っているという話ではない、ということです。これは、情報の受け取り方・処理の仕方の違いであって、優劣の問題ではありません。
管理職の方には大事にしている基準があって、それを率直に伝えているだけ、ということがほとんどです。現場の方も、慎重に物事を進めたいという大事な価値観があります。どちらの言い分も、同じだけ聞かれる必要があります。
どちらか一方だけを「変わるべき人」にしてしまうと、結局どちらかが自分の強みを押し殺すことになり、組織的にひずみが出ます。
まとめ
「コミュニケーションがうまくいっていない」という一言で片付けられがちな悩みも、分解してみると、実は一人ひとりの特性や価値観が理解されていないことがベースにある、ということがよくあります。対話の場を増やす前に、まずそこに目を向けてみることをおすすめします。
こうした噛み合わなさに心当たりがある方は、一度、組織の中で何が起きているのかを一緒に整理してみませんか。[お問い合わせはこちら]


